[目的] 本課題では、日本の自然環境で遺伝子流出がどの程度の確率で起こるのか、を定量的に検討し、数値化することを目的とする。実験材料としては、遺伝子組換え体が望ましいが、その野外栽培にはかなりの準備期間が必要である。そこで、予備的かつ基礎的なデータを得るために、自然条件下で交雑するモデル植物系を使用する。供試植物としては、ダイズとその野生近縁種であるハナマメ、アズキとその野生近縁種であるヤブツルアズキを用いた。栽培地は奈良先端科学技術大学院大学の実験園(グリーンラボ)を利用。 [実績] 本年度は交雑条件の検討も含めて、ダイズ/ハナマメ、アズキ/ヤブツルアズキのペアをそれぞれ100株ほど栽培した。このうち、ダイズ/ハナマメでは開花期が揃わず、交雑は起こらなかった。アズキ/ヤブツルアズキでは花期が揃い、交雑の可能性が示唆された。採取したヤブツルアズキの種子の形態を観察したところ、やや大型のマメが全体の2〜3%あることが明らかになった。そこで、ゲノムDNAを抽出し、多数のランダムプライマーを用いてPCRをおこなったところ、アズキ特有のいくつかの増幅断片が得られた。この断片をマーカーとして、交雑検定をおこなっている。現在、F1種子を1000株ほど温室で栽培し、DNAを抽出、PCRをおこなっている。
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