ラン藻の環境ストレス応答性遺伝子の発現制御領域の網羅的解析

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14654169
• 研究機関: 岡崎国立共同研究機構
• 研究代表者: 鈴木 石根 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (10290909)
• キーワード: ラン藻 / 環境ストレス / 遺伝子発現 / 転写開始点 / ヒスチジンキナーゼ / レスポンス・レギュレーター / シス配列 / シグナル伝達

研究概要

本研究は、遺伝子の転写開始点を網羅的に決定する方法を確立し、ストレス応答性遺伝子の転写開始点を決定し、その上流配列の比較から発現様式に対応したプロモーター構造および調節領域の推定をめざしている。本年度は以下のような進展があった。
1.環境ストレス応答性遺伝子群の同定
ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803の様々な環境ストレス応答性遺伝子の一覧表を完成し、あるストレスに特異的に発現する遺伝子から、複数のストレスにより誘導される遺伝子まで、様々なグループに分類した。さらに、以前に我々が取得した、低温センサー・ヒスチジンキナーゼ、Hik33の変異株でも解析し、このセンサーが異なる種々のストレスを認識しそれぞれのストレスに特異的な遺伝子群を制御するマルチストレスセンサーであることを示した。
2.レスポンス・レギュレーター破壊株の作製
ヒスチジンキナーゼの下位で機能するレスポンス・レギュレーターはSynechocystisに40種存在する。それらの個別破壊株を全て取得した。各種ストレスに特異的に発現する遺伝子をプローブに、レスポンスレギュレーター破壊株での発現誘導パターンをスクリーニングし、ストレス特異的レスポンスレギュレーターの同定を試みている。

研究成果

• [文献書誌] Kanesaki Y, Suzuki I, Allakhverdiev SI, Mikami K, Murata N: "Salt stress and hyperosmotic stress regulate the expression of different sets of genes in Synechocystis sp. PCC 6803"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 290(1). 339-348 (2002)
• [文献書誌] Yamaguchi K, Suzuki I, Yamamoto H, Lyukevich A, Bodrova I, Los DA, Piven I, Zinchenko V, Kanchisa M, Murata N: "A two-component Mn2+-sensing system negatively regulates expression of the mntCAB operon in Synechocystis"Plant Cell. 14(11). 2901-2913 (2002)
• [文献書誌] Mikami K, Kanesaki Y, Suzuki I, Murata N: "The histidine kinase Hik33 perceives osmotic stress and cold stress in Synechocystis sp PCC 6803"Mol. Microbiol.. 46(4). 905-915 (2002)
• [文献書誌] Simon WJ, Hall JJ, Suzuki I, Murata N, Slabas AR: "Proteomic study of the soluble proteins from the unicellular cyanobacterium Synechocystis sp. PCC6803 using automated matrix-assisted laser desorption/ionization-time of flight peptide mass fingerprinting"Proteomics. 2(12). 1735-1742 (2002)