研究概要 |
1)本州周辺を中心に採集したソコミジンコ類には形態的に区別できる3種類が含まれ,それらはいずれもイギリスにおいて記載されたDactylopusioides macrolabris (Green 1958)と属レベルの特徴において一致することから,Dactylopusioides属の未記載種であることが明らかになった.しかし,自然下で確認された宿主海藻の種類および実験的に確かめられた採餌特性の違いから,これらのうちの1種は異なる餌に適応した2つの分類群を含んでいる可能性がある. 2)これらのソコミジンコ類はいずれもノープリウス幼生,コペポディド幼体,成体ともに海藻を摂食し,それによって出来た空間を巣として利用した.摂食する際,皮層細胞の一部とクチクラ層は摂食せずに残すため,ソコミジンコ類の体が外部に露出することはない.これらの4つの分類群は卵塊の形状,変態する際の巣替えの特徴などから2つのグループに分けられる. 3)これらのソコミジンコ類はいずれも餌として利用できる海藻類の種類(組み合わせ)が異なり,5属6種の培養藻体を与えた実験では,Sp.1ではアミジグサとサナダグサを,Sp.2では強酸性種であるヘラヤハズ,ヒメヤハズ,アツバコモングサを,Sp.3ではフクリンアミジを,Sp.4ではすべての種が餌として利用され,またそれらの種に営巣した.本来餌として利用できない海藻を与えた場合の生存期間は飢餓状態のものとほとんど変わらなかった. 4)分子系統学的解析のため,飼育で得られた個体からDNAを抽出し,核コードのリボソームDNAのITS領域につきPCRによる増幅を試み,塩基配列が決定できることを予備的に確かめた。
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