研究課題/領域番号 |
14654182
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中務 真人 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00227828)
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研究分担者 |
石田 英実 滋賀県立大学, 人間看護学部, 教授 (60027480)
荻原 直道 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70324605)
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キーワード | 骨梁 / バイオメカニクス / 骨のリモデリング / ニホンザル / 二足性 / 脊柱 |
研究概要 |
伝統的猿まわし芸の調教の一環として二足起立および歩行の訓練を受けたニホンザル雄成獣の腰椎を対象に、骨梁構造が通常のニホンザルと比べどのように異なる特徴を示しているかを分析し、骨梁構造の可塑性、起立姿勢による負荷様式についての分析を行った。対象は10年近く、猿まわしの調教を受けた後、急性呼吸器感染症のため急死したニホンザル2個体で、直立姿勢と関連する腰椎前弯が生前から認められていた。7つある腰椎について中央矢状部をpQCTにより50マイクロメーターの平面解像度で連続断層撮影した。断面間隔も50マイクロメーターである。得られた画像データを三次元構築ソフトウェアAnalyzeを用いてPC上で立体構築した。また比較のため、通常のニホンザル10個体につても腰椎の矢状面の計測を行った。 観察の結果、関心領域内における骨質の割合(bone volume fraction)については個体変異が認められ、二足訓練を受けた2個体のうち、一方は非常に高い値を示し、他方は逆に標準よりも低い値を示した。通常のニホンザルにおいても個体変異が大きく、海綿骨量のみから二足性との関連を推定することは困難であった。しかし、骨梁の走行パターンについては、顕著ではないが頭尾側方向に並ぶ骨梁が発達する傾向があった。しかし、その方向と腰椎前弯との関連は存在せず、前弯による傾きが最も顕著な最終腰椎でも頭尾側方向であった。椎体腹側の緻密骨には著しい骨質の集中が2個体とも認められた。腰椎前弯により前縦靱帯への力学的なストレスが増大し、それによって骨沈着が促進されたことを示唆される。二足訓練を受けたニホンザルでも特に著しい骨梁構造の改変を起こさないというこうした結果は、通常のニホンザルでも、日常で頻繁にとられる座位姿勢では脊柱が直立しているなど、体幹自体がもともと直立姿勢に適応してたことを示唆する。
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