研究課題
本計画は、中性子光学と材料開発とを結びつけた新しい視点による技術開発により、中性子回折による構造解析を現在の1/100程度の微少量の試料で可能にする試みである。中性子粉末回折実験は、X線回折実験に比べ、軽元素を含む材料、例えばLi2次電池材料などでは圧倒的に有利である。ところが、これまで中性子実験では、どうしても数g以上の試料が必要であった。このため、材料研究者からは微少量試料(<100mg)での中性子実験の要望が強く寄せられていた。一方、最近、理研などを中心に優れた中性子線集光技術が開発され、成果を上げている。そこで、物質材料研究者である金属材料研究所グループと中性子光学素子研究者である理研グループが共同研究を行い、中性子光学素子技術の材料研究への応用の可能性を探り、かつ、微少新物質での構造研究を可能にする中性子回折実験技術を開発するという双方向の研究協力を行う事を目的としている。平成14年度には、大山、東方、小野寺によって、デバイスを取り付けるための中性子回折装置の改造が行われた。それに平行して、中性子回折にとって必要なデバイス性能をモンテカルロ法で定量評価し、デバイスグループとの定量的議論の材料にした。また、本研究の目的である微少試料の扱いには、特別な配慮が必要で、そのため高精度の上皿天秤を購入し、実験室に設置した。一方、清水、安達、奥によって、中性子回折用の中性子デバイスの開発が行われた。この際、中性子回折グループとの議論を繰り返し、中性子回折実験に最適化したデバイスの開発を進めた。