研究概要 |
我々はCu : TCNQの蒸着比率を制御することによりアモルファス状の薄膜を形成できること、そしてITO/Al/(Al_2O_3)/Cu : TCNQ/Al素子構造において再現性のあるスイッチング特性の発現に成功した。これまでの検討からアルミニウム電極上にUVオゾン暴露により形成された酸化アルミ(Al_2O_3)層の存在がswitching特性の発現に重要な影響を与えていることを見出した。そこAl_2O_3の膜厚を精密に制御できるスパッタ法によってITO/Al_2O_3/Cu : TCNQ/Al素子構造を作製したところ、再現性のあるスイッチング特性の発現が確認された。(APL,83,1252(2003))しかしながら、スイッチング特性は酸化アルミの膜質の影響を強く受けると考えられ、ON/OFF比のバラつきが大きいなど、未だスイッチング特性を左右する不確定な要素がある。また、スイッチング現象はアルミニウム陰極でしか発現せず、作動メカニズムにAl_2O_3/Cu : TCNQとCu : TCNQ/A1の両界面の重要性が推察された。 本研究では,高抵抗状態から低抵抗状態,低抵抗状態から高抵抗状態への転移のメカニズムは未だ不明確のままであることやON/OFF比の再現性の問題点がある.これらの問題点を解決するために、今後,ITO/Al_2O_3/Cu : TCNQ素子構造におけ電極を半透明薄膜やITO電極を用いることによって、電流転移状態でのUV/VIS測定やIR測定によるCN基の振動ピークを観測し,薄膜内部での状態変化によるスイッチング挙動の原因を追求していくことが課題である。また、TCNQはCuと共蒸着することでアモルファス状の薄膜を得ることが可能であるが、結晶化しやすく、膜質が不均一である問題点があり、OLED素子との複合デバイスの作製が困難であった。今後、TCNQを基本骨格としてメチル基やアルコキシ基等の置換基を導入し、溶解性やアモルファス性の向上が検討課題である。
|