研究概要 |
フォトニック結晶の最大の特徴であるフォトニックギャップの出現には周期性は不要である事が本研究によって判明した.既に開発した多中心ベクトル円柱関数展開法による厳密な解析解のプログラムを用いて,様々な配置の平行誘電体円柱群でのフォトニックギャップの有無とその異方性を調べた.この手法はFDTDのようにピクセルのとり方の曖昧さがないので極めて信頼性が高く,逆行列法も用いる事ができるので様々な入射角でのギャップ位置が一挙に計算できる利点を有する.更に群論を用いて対称性を高度に利用した結果、従来とは比較にならないほどの大規模な系での計算が可能となった.これを用いて数値計算を行った結果,以下の事が判明した.3回回転対称から10回回転対称までの広範な範囲で,様々な回転対称配置の2次元平行円柱系を調べた結果,円柱の誘電率が閾値を超えると殆ど共通のある波長領域にギャップが出現する.このギャップはほぼ等方的であり,誘電率や円柱群の密度が高い場合はさらに高次のフォトニックギャップが出現する.これらのギャップはTMモード(電場が円柱軸に平行)に顕著に現れ、TEモードではあまり現れなかった.この点はエアーホール型の回転対称配置円柱群を用いることで解決できると思われる.更に,これらのギャップは円柱の配置の揺らぎに対して極めて強固な安定性を有することを見出した.この安定性は工業的な応用面で非常に重要な発見である.また,形状の異なる円柱や円柱列欠陥を入れる事によってギャップ内部に不純物モードが現れることを確認した.従来の並進対称型2次元フォトニック結晶を用いた光導波路では進行方向を曲げるのが難しかったが、今回開発した回転対称型フォトニック結晶を使えば光を任意の角度で滑らかに曲げられる可能性が見出された.このような多様性に富んだ導波路設計の基礎付けとなる数値データを本研究の成果によって提供することが可能である.
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