研究概要 |
本研究では、多層膜の反射理論計算で発見した"多層膜鏡の表面をミリングすると物理光学的であり,幾何光学的な基板ミリングとは原理的に全く異なる光学的効果が得られる"ことを可視光で実験的に検証する.また,得られる基礎データをもとに,"多層膜の表面ミリングで反射波面を物理光学的に精密制御できる"ことを応用研究へ展開する道を探ることを目的とする. 本年度は,まず,反射多層膜鏡の表面を,所定の面内分布をもった3次元の形状に制御したときに期待される反射波面の光学特性を明らかにするためのソフトウエアーを開発した.このソフトウェアーでは,複素振幅反射率(波面の振幅と位相特性)の入射角依存性と波長依存性の計算を、実験的に制御するパラメーターである膜厚を変数としてグラフィック表現できる.これを用いて,波長が600nmの可視光,13nmの極紫外光,及び波長0.154nmの斜入射角3度のX線鏡について理論計算を行なった結果,多層膜1周期毎に,反射位相角がそれぞれ,約180度,6度,1.8度の割合で制御できることが判った. 理論計算と並行して,可視光を用いてこれらの基本特性を実験的に検証するためのコモンパス干渉計を製作した.干渉縞の記録用にはCCDカメラを備品購入したほか,光学ステージや溶融石英レンズを購入して干渉計を組み上げた.凹面鏡を用いて予備実験を行い,He-Neレーザー,次いで超高圧水銀灯の546nm輝線で干渉縞を観測できた.しかし,干渉縞のコントラストが不充分で,ビームスプリッターの特性を最適化する必要があることが判った. 検証用の多層膜試料は,ミリングを模擬するために,基板面上に段階的に層数の異なる領域を設けて作成する.所定の段差を持った多層膜試料を作成するために現有のイオンビームスパッタリング装置に,直線導入機構を含むシャッター機構を取り付けて,成膜の予備実験を開始した.
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