現在得られつつある単色で高密度な原子ビームを用いることによって初めて実現される微小スポットビーム(〜10nm)を用いて、新しいナノ構造製作技術の基盤を確立することが本研究の目的である。具体的には、レーザー光によって高密度で単色な原子ビームを準備し、これを別の集光用レーザー光によってナノメートル程度まで絞り込んで基板上に堆積させる技術を開発する。同時に、集光用レーザー光の位置を時間的・空間的に制御する事によって、任意の位置に、任意の形状、大きさのナノ構造の製作技術の実現も視野に入れている。本年度はまず本研究者らがこれまでに得ている単色高密度原子ビームをさらに安定に発生させるため、安定化した周波数シフト帰還型レーザーの試作を行った。 単一モードレーザーをそのまま利用していた従来法では、レーザーのスペクトル幅は数10MHz程度に留まっていたが、周波数帰還型レーザーでは数10GHz以上の幅が実現されている。ただし、チップモードの影響が残っており、この制御が課題であった。本研究ではこのチップモードの制御を行うために、残留反射の影響に注目して実験を行った。まず、周波数帰還型レーザーの試作を行い、現在基本的動作特性を解析しているところである。チップモードが存在する場合のスペクトル幅がおおよそ10GHzであるが、本研究で試作したレーザー光をホモダイン検波したところ、25GHz以上に渡ってビート信号が得られた。これは、チップモードの影響が極めて小さいことを示唆していると考えられ、これを確認するためにより詳細なスペクトル解析を行っている。 来年度はこれらの成果をもとに、原子ビーム収束等の実験を計画しており、並行してその準備を進めている。
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