現在得られつつある単色で高密度な原子ビームを用いることによって初めて実現される微小スポットビームを実現するための、新しいナノ構造製作技術の基盤を確立することが本研究の目的である。具体的には、レーザー光によって高密度で単色な原子ビームを準備し、これを別の集光用レーザー光によってナノメートル程度まで絞り込んで基板上に堆積させるための基盤技術を開発する。本年度は周波数変調半導体レーザーの周波数安定化と原子ビーム速度制御実験を行った。 単一モードレーザーをそのまま利用していた従来法では、レーザーのスペクトル幅は数10MHz程度に留まっていたが、周波数変調法により数100MHz程度のスペクトル幅が得られる。これによって熱的に拡がった原子速度を連続的にある程度の速度まで減速することが可能となる。この原子ビームに対して、外部鏡を用いた周波数変調・安定化半導体レーザー光を照射することにより、MHz程度の分解能で精密に原子速度を制御できることを明らかにした。さらに変調周波数を変えることにより、狭い幅を維持したままで任意の速度の原子ビームを作製できることも見出した。これらの成果は、速度を任意に制御できる単色原子ビーム発生法の基盤技術として重要であると考えられる。また、現在開発中の横モード制御レーザー発生のための新レーザー共振器が完成すれば、原子ビームをナノメートル程度まで集光する技術開発のための基盤技術が実現されるものと期待される。
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