研究概要 |
荷重を支持する生体組織は力学的に最適化されている場合が多い.そこで造物の最適形状設計のため,生体組織のこのような性質を計算機上で模擬し,適当な初期形状から最適形状を得る試みが行われている.しかし,最適な形状が得られたとしても,実際にその形状を作るのは形状が複雑であるほど困難である.そこで本計画では実際の培養細胞に適当な力を加えることにより力学的に最適な構造を形成させることの実現可能性を評価するため,種々の細胞を弾性シート上に播種し,シートに様々なモードの繰返し変形を加えながら培養し,細胞が全体で形成するパターンや個々の細胞の形態変化を調べ,細胞に力学場に適した構造を作らせることが可能かどうか検討することを目的として2年間の研究を進めている.研究初年度の本年度は,市販の細胞繰返し進展刺激負荷装置に改良を加え,2軸の引張を加えることのできる装置を試作した.即ち,市販の装置の1軸の進展機構にリンク機構を利用したモジュールを取り付けることにより従来の軸ならびにそれと直交する方向への繰返し進展を行うことができるようにした.本モジュールは簡単な組み替えにより,2軸同時の引張りと2軸交互の引張を切り換えることができる. 本装置を利用してウシ大動脈由来血管内皮細胞に1軸,2軸同時,2軸交互の進展刺激を加えたところ,細胞の配向は1軸では引張と直交する方向へ,2軸同時ではランダムなまま,2軸交互では2つの軸と45。の方向に集中した.この方向は細胞長軸に対する繰返し引張ひずみが最小となる方向であり,細胞は繰返し変形刺激が最小となる方向に配向するらしいことが確認できた.
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