研究概要 |
本研究は,永年にわたって未解明である骨リモデリングに及ぼす力学的要因の影響を定量的に評価するため,皮質骨組織に作用する力学負荷環境を定量的に制御し,力学負荷と皮質骨リモデリング量の関係を定量的に評価できる実験系の開発を目指すものである.平成14年度はその第1段階としてリモデリング実験のために必要な負荷履歴を制御された骨組織を生体内に誘導する手法と骨組織に対する生体内負荷装置を試作した. ラット大腿骨に骨欠損を作成し,その治癒,再生能の基本的な特性を把握する実験を行った.これにより通常の環境下ならばある程度の大きさの骨欠損は数週間で完全に回復することが確かめられた.そこで,整形外科で臨床的に用いられている創外固定器を用いた骨延長術をラットに応用し,新生骨組織誘導実験を行った.その結果,骨延長後数日間静置すると欠損部仮骨内に網状骨組織の形成がマイクロCT観察により確かめられ,当初期待したような新生組織誘導が可能であることが示された.しかし,この実験は非常に高度な手技を要するため成功率が非常に低く,今後手技や手術デバイスの改良を要する. また,骨延長術用の創外固定器にカップリングを介してステッピングモータを取り付け,皮質骨組織に定量的負荷を与えるデバイスを開発した.ラットより摘出した大腿骨に創外固定器を取り付け,開発した装置で駆動することによりその動作評価を行った.その結果,大腿骨に軸方向ひずみを与えることはできたが,その大きさは設定値の1/10程度であった.またアクリル試験片に負荷を加える実験により,大きな曲げひずみの発生が観察された.これは創外固定器を駆動するネジ部のバックラッシュの影響や片持ち式の創外固定器の形態の影響が大きいものと考えられる.今後この試作機で得られた知見を基に,引き続き機構の改良を行う.
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