研究概要 |
加工液(油)を使用するのが常職であった放電加工を気中で行い,パイプ電極から供給する気体と工作物との化学的加工を積極的に利用することにより,従来の放電加工に比較して約十倍の加工速度を達成することができた. 工作物が鋼材の場合は,パイプ電極から酸素ガスを供給しながら加工を行った.過度に休止時間が短く,ピーク電流が高い場合は,急激な燃焼反応が生じ暴走状態になるため,形状のコントロールができないことが分かった.そこで,普通の気中放電加工の状態と暴走状態との中間に,準暴走状態が存在することを明らかにした.この準暴走状態は,パルスごとに放電点が生成されることや,電流の供給を止めると化学反応も停止することが暴走状態と異なる点である.この準暴走状態では,従来の放電加工の約十倍の加工速度が得られ,しかも形状のコントロールが可能である.そこで,放電パルス条件,気体の供給条件,工具電極材料などを変化させて,最適な加工条件を明らかにした. 一方,準暴走状態では加工精度が良くないという問題点が明らかとなった.これはパイプから噴出するガスとともに加工屑やプラズマがパイプの外側の広い領域に運ばれ,それらを介して絶縁破壊が生じてしまうため,加工ギャップが拡大して加工穴のエッジがダレるからである.そこで,パイプの内側からガスを噴出するのではなく,外圧をかけて加工屑をパイプを通して吸い出す外圧法を試みた.その結果,加工速度を噴出法と同程度に保ったまま,加工精度を大きく向上できることが分かった. そこで,平成15年度は切削加工の加工速度を凌駕する加工速度を実現することを目標とし,3次元形状の高速荒加工を可能にする予定である.
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