研究概要 |
本研究では,金型内表面へ金属薄板をかぶせた金型を用い,両者間の接触熱抵抗が金型内の圧力上昇と伴に減少することを利用し,かつ熱容量の小さい薄板部分を射出成形加工前に加熱して,射出成形加工したときの,金型からの転写性や冷却特性について,接触熱抵抗や薄板部分の加熱の影響を明らかにすることを目的として研究を行う. 本研究の金型を用いれば,金型表面部分の薄板の熱容量が小さいため簡単に金型表面の温度を高めることが出来,溶融樹脂充填時の流動性が良くなり,かつ金型表面の転写性も良くなる.さらに金型本体の温度は低く保てるので,圧力が高くなった充填完了時以降は,接触熱抵抗が小さくなり,充填された樹脂が急速に冷却される.その結果,加工サイクルを短くでき,転写性も良い,全く新しい機能を有する金型になると予測される. 本年度は,金型内表面へ金属薄板をかぶせた金型を用い,薄板をかぶされた金型面と薄板面の間の接触熱抵抗の変化及び薄板の予備加熱が射出成形品へ及ぼす影響について検討するため,以下のような研究を行った.(1)金型表面へ蒋板をかぶせ,薄板と金型本体との間の接触熱抵抗の値を変化させ,かつ輻射熱を用いて薄板を加熱したとき,成形中の薄板の温度挙動.(2)溶融樹脂を充填するときに金型表面の温度が高くなると,充填樹脂の粘度が低下し,充填するため圧力も低下する.そこで,上述のように薄板を加熱して金型表面として用いたときの,樹脂流動長さ.(3)金型表面と薄板間の微小空気層厚さを変化させたとき,薄板の材質を代えたときの温度や流動長さの関係. その結果,薄板を金型表面に貼ると流動長さが長くなり,成形中の最高温度も高くなることが分かった.さらに,薄板の熱拡散率が低く,空気層厚さが厚い方が効果的であることが分かった.冷却サイクルに及ぼす影響は少ないことも明らかとなった.
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