研究概要 |
不織布の新たな市場開発や技術的ブレークスルーを目的に,ソックタイプ形状を持つ室内空調用の空気清浄フィルター(以下、これを空気清浄空管と呼ぶ)として安定な流動条件を同定すべく本空管内の流動特性を調べるとともに,新たな摩擦抵抗低減方法として不織布を壁面に貼付することを提案し,本手法の効果を検討した. 前者では,実際の設置状態を模倣した装置を試作し,清浄空管内圧力損失測定から以下の知見を得た.使用した不織布の透過率が10^<-11>(m^2)のオーダーであること,清浄空管先端部で流れが淀み清浄空管内圧力の上昇をもたらすこと,清浄空管直径Dと長さLとの比D/Lが0.1より大きい場合,清浄空管へ流入する空気の流量と清浄空管内圧との関係が定常流れを仮定したDarcyの法則により説明できること,Reが小さい範囲では提案した1次元流動モデルが実験結果と定性的にほぼ一致すること,等を明らかにした.一方,後者では,内径25mmのアルミニウム円管内壁面に不織布を貼付し,圧損より管摩擦係数を求め,これら結果を,滑壁面を持つアルミニウム円管の結果と比較した.その結果,本実験範囲では,あるタイプの不織布で,動作流体に水道水を用いた場合で最大約30%,空気を用いた場合に最大約6%の抵抗減少効果をそれぞれ得ることが分かった.その際,不織布無次元厚さy^+が,粘性低層に近い緩和層内(y^+=6〜12)に存在すること等を明らかにした.抵抗低減には,不織布厚さはじめ繊維の直径や長さ,繊維分布や繊維密度,さらには静電性,撥水性,強さや硬さといった繊維自身の電気的・化学的・機械的性質も影響していると考えられる.
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