研究計画の初年度にあたる平成14年度は、種々の熱可塑性高分子材料を加熱固体面に押しつけたときの融着現象を、材料の表面エネルギーとレオロジー物性の観点から検討した。その結果、以下の知見が得られた。 (1)表面エネルギーと融着現象 固体材料と液体との間の接触角の計測から固体材料の表面エネルギーを評価する手法・装置を確立し、実際にいくつかの高分子材料に対して表面エネルギーを計測するとともに、参照固体面としてのガラスとの融着強度を計測した。その結果、高分子材料と固体面間の融着強度は、表面エネルギー差の大きな組み合わせほど強くなることが確認された。また、融着界面に両物体が濡れやすい媒体、例えば水が入ると融着強度は極端に低下することが確かめられた。 (2)高分子材料のレオロジー物性と融着現象 融着現象を生じる際の各種高分子材料のレオロジー物性を詳細に計測した結果、加熱固体面に押しつけられた高分子材料が融着する条件は高分子材料の損失正接が1を越える、すなわち材料の流体的性質が弾性体的性質を上回ることであることを明らかにした。また、この条件近傍で固体面と高分子材料間の融着強度(剥離応力)を計測したところ、融着強度は材料の損失正接が1を越える温度を上回ると急速に増大することが明らかになった。 これらの結果から、高分子材料と固体面の間の融着は、高分子材料自体の軟化によって固体面との間の真実接触面積が増大することで発現し、そのときの融着強度は物体間の表面エネルギーによって決まると結論づけられる。
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