研究概要 |
本研究は,シリコンウェハー上に作成された微細流路内の気液二相流を自励振動させて,熱輸送の促進を行い,10^7W/m^2程度の高熱負荷に対応可能な冷却デバイスを開発することを目的とする.流路の左側を加熱,右側を冷却することにより,中央部分で気相と液相に分離するが,微細流路はマルチチャンネルを形成しているので,適度な条件を与えれば自励振動が発生し,大幅な伝熱促進効果が期待できる.本研究で開発を目指すものは半導体製造プロセスを応用して,シリコンウェハー上に50〜200mm程の寸法の流路を作成し,そこに気液二相流を流すことで自励振動を発生させようとするものである.通常,流路径が小さくなると,圧力損失が増大し,振動は発生しにくくなるが,本研究では作動流体の種類や封入条件を適度に選定することにより,安定的に振動を発生させようと試みるものである. 本年度は,巾270μm,深さ55〜85μm,長さ30mm,ターン数20のマイクロヒートパイプをシリコンウェハー上に試作し,数種類の流体を用いて流動可視化実験を行った.シリコンウェハー上に作成されたマイクロチャンネルにパイレックスのカバーガラスを陽極接合することで可視化を可能にしている.作動流体としてエタノールを使用したが,振動流は観察されなかった.そこで流体をR141bに変えたところ,自励振動が発生し,有効熱伝導率が14%増加した.次年度は最適な動作条件の探索を行う予定である. 一方,振動流による壁面との伝熱機構を明らかにする目的で,パルス管冷凍機の数値シミュレーションも実施した.この数値シミュレーションにより,ベーシック型パルス管冷凍機の動作原理が明らかになった.
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