研究概要 |
マイクロメートル以下の微小物体をマニピュレーションする技術に関する研究は数多く行われているが,従来のどの手法も十分な再現性や信頼性を有しているとは言えない.これは固体表面粗さの局所的バラツキなどの要因が不確定要素となり凝着現象に影響するためである.固体間に液体が存在し,液架橋を形成する場合,それぞれの固体表面粗さのバラツキが凝着力に与える影響は非常に小さなものになる.そこで,本研究では,微小物体とその物体が凝着する工具との界面に液滴を存在させ,マニピュレーションの系を物体表面粗さに関係しない理想的な物理モデルに近づけ,さらに,その量を制御することによって,再現性,信頼性の高い微小物体マニピュレーションを実現することを目的とする. 本年度は,液架橋力マニピュレーション手法の定量力学モデルを検討し,液架橋力により,微小物体の工具への付着,離脱を制御するための定量的条件を考察した.具体的には,基板上に置かれた微小物体を工具先端の液滴との相互作用(液架橋力)によって引上げたり,基板上に再び置いたりする作業を想定した場合,液滴量を如何に制御すれば,意図どおりの物体操作が可能であるかを,液架橋形成の支配方程式を元に見積った.この見積から,液架橋のフォースカーブ挙動ともいうべき知見,すなわち,「2固体間の存在する液滴の表面エネルギーとその量が与えられた場合,2固体間の距離と発生する液架橋力との間の関係」という重要な知見が得られ,液架橋力マニピュレーションに対する重要な指針を提案するに至った.この成果は,"9th Symposium on "Microjoining and Assembly Technology in Electronics (MATE 2003)"で発表され,現在,Journal of Applied Physicsに投稿準備中である.
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