本研究課題では希薄磁性半導体スピン読み出し素子を提案し、次世代の量子情報処理・通信技術の基幹となる量子状態読み出し素子のプロトタイプを作製することを目指して研究を進めた。具体的には平成14年度の1年の研究期間で希薄磁性半導体量子井戸構造スピンフィルタを用いたスピン読み出し素子を提案し、その構造と期待される性能について理論的検討を行った。本年度に得られた主な研究成果は以下の通りである。 (1)II-VI族希薄半導体量子井戸構造スピンフィルタの設計 ZnMnSe/ZnSe及びZnCdMnSe/ZnSe量子井戸構造を用いたスピンフィルタに注目し、フィルタリング特性について計算を行ったところ、スピンをフィルタリングできるエネルギー及びその帯域が井戸や障壁層の厚さや組成などの構造をによって制御可能であることがわかった。 (2)II-VI族希薄磁性半導体量子井戸構造スピンフィルタを用いたスピン読み出し素子の提案 ZnMnSe/ZnSe及びZnCdMnSe/ZnSe量子井戸構造スピンフィルタを用いた3種類のスピン読み出し素子を提案した。これらの素子ではスピン状態の読み出しに光を用いるが、この光のエネルギーが量子井戸内のサブバンドのエネルギーに一致したとき、スピンの方向を効率良く光電流の流れる方向に変換できることがわかった。 (3)II-VI族希薄磁性半導体量子井戸スピン読み出し素子を用いた高周波発生器の検討 スピン読み出し素子と微小アンテナをカップリングさせた高周波発生器を提案し理論検討を行ったところ、円偏光バンド間光とサブバンド間光を用いれば、印加磁場によりギガヘルツからテラヘルツの周波数領域で可変な高周波発生器が作製可能であることがわかった。
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