研究概要 |
電子ビーム鏡筒の分解・整備を行い、これまで電子電流が1.4×10^<-11>Aしか得られなかった原因を調査した。その結果、アパーチャ位置ずれが原因であることが判明し、この部分を修理することにより、ビーム電流をこれまでに比べ3桁大きい3.5×10^<-8>A得ることができた。また、ビーム径を0.1ミクロンに絞れるようになった。 改良した装置を用い、F_2ガスを反応チャンバー内に2×10^<-6>Torrまで導入し、加速電圧10kV、電流密度1.9×10^<-2>/cm^2の条件でシリコン基板表面に電子ビームを6時間照射した結果、シリコン表面に約100nmの孔を穿つことに成功した。また、電流密度の小さい部分では、膜堆積がおこり盛り上がることをAFM観察により確認した。 問題点は、電子ビーム照射中に基板ステージが動くため、ナノ構造が形成できないことである。基板ステージの改良が必要である。 また、アンモニアとモノシラン混合ガスを用いたプラズマCVD法によって、シリコン窒化膜を形成する際、プラズマパワーが10Wと小さいと、膜がポーラスで不安定なため大気中で自然酸化し、約1ヶ月後にシリコン酸化膜に変化してしまう現象を発見した。一方、低温成長プラズマCVDアモルファスシリコン膜において、電子ビーム照射によって、水素離脱・緻密化がおき、ナノシリコンドットが形成されることが報告されている(M.Hirose et al.,J.Photopolymer Sci.& Tech.,Vol.7,599(1994))。 これらの現象を組み合わせ、電子ビーム照射部に緻密なシリコン窒化膜のナノドットを形成する方法を提案する。この方法では、低ドーズ電子ビーム照射によってナノ構造が形成できる可能性があるので、短時間電子ビーム照射でよく、ステージ不安定性の問題を回避できる可能性がある。現在この方法を試みている。
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