研究概要 |
交換スプリング特性を有する高性能磁石膜をPLD法により実現するために,まず,Nd-Fe-B,α-re, Fe_3Bターゲットを用いて成膜条件と膜構造,膜の磁気特性の関係を調査した.その結果,Fe_3B, Nd-Fe-B膜については成膜時には非晶質構造となり,α-Fe膜については結晶質となることが見出された.この結果から,優れた硬磁気特性有する膜を得るためには,成膜後に結晶化のための熱処理が必要であることが明らかとなった.そこで,Nd-Fe-Bターゲットの組成と熱処理条件の最適化を行った.その結果,Nd_<2.6>Fe_<14>Bターゲットを用いて作製したNd-Fe-B膜を650℃で結晶化することにより,残留磁化0.68T,保磁力1.2MA/mのNd-re-B膜が得られた. 次に,ナノ構造のマニュピュレーションを可能とするために,成膜条件とNd-Fe-B,α-Fe, Fe_3B膜の成膜速度の関係を調べ,積層ナノ構造を達成するためのターゲット構造の設計を行った.設計に基づいて作製したNd-Fe-B/Fe_3BおよびNd-Fe-B/α-Feターゲットを用いて,ナノ複合膜成膜後これを上記の条件で結晶化して複合磁石膜を得た.2つの系で得られた膜の残留磁化は,それぞれの単相膜に比べて高くなり,ナノ複合化の効果が確認された. 膜のモロホロジーを調べた結果,膜表面に二種類のターゲットの中間的組成を有する多数のドロップレットが観察された.この低減が今後の課題となる.
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