研究概要 |
昨年度、銅板に感光性ポリイミドを塗布した試料を使ってベンゾトリアゾール(BTA)前処理の効果を調べた結果を受け、本年度は無電解めっきで形成した銅電極上に感光性ポリイミド膜を塗布した試料を作製してBTA前効果を調べた。また、XPS測定により、BTAの熱耐性を調べ、さらに有効な銅配線形成方法について調べた。 銅電極表面にBTAを吸着させた試料を窒素雰囲気中でさまざまな温度でアニールした後、XPS測定により表面元素を調べた。炭素(C)ならびに窒素(N)の構成比より、銅表面上のBTA分子はおよそ275℃まで耐えることが分かった。本研究で使用した感光性ポリイミドの最終硬化温度が320℃であるため、最終工程ではBTA分子が分解している可能性が高いが、硬化工程で銅を腐食する水分などが発生するのは低温度領域であると予想され、その温度までBTAが銅表面に存在していれば、銅配線の防食効果を期待できる。また、最終硬化温度が275℃を越えないポリイミド材料を用いれば、さらに完全な防食効果が期待できることが分かった。 めっき銅電極にBTA前処理を施してポリイミド膜を形成した場合は、BTA前処理を施していない試料に比べてリーク電流が約10分の1まで低く、昨年度、銅板で調べた結果と同様のBTA前処理効果が確認できた。温度と電圧ストレスを加えた測定(BTS測定)では、温度200℃、電界強度1MV/cmにおいてBTA処理した試料は10^<-9>A/cm^2台と集積回路に充分応用できるまで低くなることを確認した。 BTS処理後のポリイミドサンプルのXPS深さ方向測定を行ったところ,BTA未処理時はCuが0.8〜1.5at%程度検出されたが,BTA処理後は検出限界(0.1at%)未満であったことから、BTA前処理により、銅のポリイミド膜中へのマイグレーションを抑制できたため、上記の効果が得られたと言える。
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