研究概要 |
本研究では,新たな局所粘性特性の計測のため,2つの特異な現象を巧妙に利用した血管壁の加振に基づき,発生した振動の血管壁伝搬特性を計測し,弾性特性と併せて,粘弾性特性に関する断層像を表示することを目標としている.そのため,平成14年度は主として工学的側面からの局所粘性特性の計測システムと計測値の評価を行った. (1)本研究代表者の開発した計測システムのプロトタイプを改造し,超音波信号の他に,心電図,心音図,血管内圧波形,呼吸波形の4チャネルを同時にA/D変換するための粘性特性計測システムを構成し,血管壁の微小振動の高精度計測を可能とするように現有設備の処理ソフトを修正した. (2)自発的広帯域局所加振現象(血管壁内で生じた乱流や渦が血管壁に広帯域振動を励振させる現象)を確認するため,水槽中に設置した模擬血管に脈流を流したときに生じる壁振動を多点で同時に計測し,波形を観察するとともに,波形間の伝達関数・相関関数などを数百Hzの周波数帯域にわたって求めた.さらに,励振された微小振動が壁中を伝搬する間の伝搬特性から,ずり弾性波の伝搬に伴う減衰特性と伝搬速度を計測した.この現象の理論的裏付けは,現在調査中である. (3)水槽実験での外部加振による広帯域内圧変化励起現気の計測外部加振による広帯域内圧変化の計測 外部加振による広帯域内圧変化励起現象(計測部位の近傍の血管壁を経皮的に加振した際の計測部位で血管壁に広帯域内圧変化が生じる現象)を,水槽中の模擬血管を用いて確認し,上記(2)と同様に,その内圧変化に伴って発生するずり弾性波の伝搬減衰と伝搬速度を計測した.これら(2)(3)の現象は従来計測されたことが全くなく,本研究者が開発した精密計測によって確認出来たことは画期的な成果といえる.現在,得られたずり弾性波の伝搬減衰と伝搬速度を用いて,ずり弾性定数(剛性率)とずり粘性定数の決定を行っている.
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