研究概要 |
本研究は複雑な非線形対象に対するモデリング手法である「Just-In-Time (JIT)モデリング」の方法論が,実システムの制御に適用可能であるかどうかを検証し,それを通じて「JIT制御」の基本的アーキテクチュアとアルゴリズムの枠組みを構築することを目指している. 「JITモデリング」とは,データは採取するが恒常的なモデルを作らず,必要が生じたときだけ要求されるデータポイントの近くのデータだけを用いてモデルを構築し要求にこたえようとするやり方である.データを蓄積しておき,モデルが必要である場合のみ必要なデータだけを取り出してモデリングを行うことにより,モデリングの問題に付きまとう「一般化」の問題を回避することが出来る. 本年度は,JITモデリングにおける問題点を解決し,その基礎の上に内部モデル原理にもとづくJIT制御の方式を提案した.具体的には下記の内容を行った.1.JITモデリングでは通常は要請のあった時の情報ベクトルの値の「近傍」にある蓄積データを用いるが,「近傍」の取り方は任意性が強くしかもそれがモデルの精度を左右するので,JITモデリングにおいては近傍の選択がその成否を握ると言っても過言ではない.それについて研究代表者らがこれまでに提案した「最終誤差評価法」を用いた近傍選択法の正当性を理論的および実際的に検証した.2.JIT制御を内部モデル原理にもとづく制御のアーキテクチュアに適用し,そのアルゴリズム開発を行った.まず人工的かつ数値的な制御対象にこの方法を適用し,そのFeasibilityの解析を行った.特にテストベッドとしてダイレクトドライブアームを用いてJIT制御の有効性を検証するとともに,その問題点を明らかにした.3.JIT制御を2自由度制御系のアーキテクチュアに対して適用し,そのアルゴリズム開発を行った.特に,1.に関連して,近傍の選択方法に対する新しい「Feature Weighting」と呼ばれる重みつき距離に基づくアルゴリズムを提案し,その有用性を示した.
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