研究概要 |
数値解析において,逐次更新過程は最もよく用いられる手法である.連立一次方程式の逐次解法や,非線型方程式の根を求めるNewton法,微分方程式における差分法などはその顕著な例である.本研究の目的は従来個々のスキームごとに議論されてきたさまざまな性質,例えば解の収束性や安定性を,システム理論の観点から統一的かつ見通しのよい方法で議論する基盤を与えることにある. 前年度までは微分方程式の差分法に関して,不安定特性根の可検出性と数値不安定性との関連を研究してきたが,今回はより基礎的な逐次解法に立ち返って研究し,線形,非線型方程式の解法,および常微分方程式の基本的解法であるRunge-Kutta型解法の設計問題について研究した.得られた成果は以下の通りである. 1.連立方程式の解法においては,ほとんどのスキーム(Jacobi, Gauss-Seidel, SOR 法など)が閉ループ制御系として記述可能であること,また収束性のために離散積分要素がループ内に含まれることの必要性を言う内部モデル原理と呼ばれるものが成り立つこと. 2.非線型方程式の解法であるNewton法においても同様の事実が成り立ち,Lure系と呼ばれる系に変換しての安定解析が可能であること. 3.Runge-Kutta型解法においては,その安定領域を最適化するための線形行列不等式条件を見出し,最適な係数を持つ解法が設計可能となったこと. 次年度はこれらの成果を踏まえ,偏微分方程式の差分法への展開を目指したい.
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