ポストテンションタイプのPCでは、PC鋼材を腐食から守り、コンクリートと一体化させるために、プレストレス導入後グラウトがシース内に注入される。しかし、グラウト施工が不完全な橋梁では、供用中、水や塩分の浸透により、PC鋼材が錆びて、橋の耐久性が問題となる。本研究は、PC鋼材の腐食程度が残存耐力と安全性に及ぼす影響を、グラウト状態を変化させて実験および解析的に明らかにしようとするものである。本研究では、電気防食の逆の原理を利用して、ポストテンションPC部材中のPC鋼材または鋼製シースを陽極に、外部電極を陰極にして電気を通電させることにより錆を発生させ、腐食を促す促進試験を行った。本研究から以下のことが明らかとなった。 1)シース内のグラウトの充填度(完全に充填されたもの、部分的に充填されたもの、グラウトが全く充填されておらず、空気または水で充填されているもの等)を変化させて、腐食試験を行った。その結果、グラウトが完全に充填された場合は、グラウトが充填されていない場合に比べて、シースの腐食によるひび割れが、早く生じることが明らかとなった。しかし、PC鋼棒の腐食程度と速さは、グラウトが完全に充填された場合の方が、グラウトが充填されていない場合に比べて、遅くなることが明らかとなった。 2)シースの腐食によりコンクリートにひび割れが生じると、塩分の浸透が早まり、加速度的に腐食することが明らかとなった。
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