研究概要 |
昨年度の基本的な検討によって,断面比2の長方形角柱模型前縁上下のスリットから噴出させる噴流の流量がもっとも大きくなる模型の内部構造を決定したが,本年度はその模型を使用して,前縁噴流による空力振動抑制実験を実施した.本年度の研究の主眼は,模型の振動変位波形を噴流の風速波形に反映させる実験システムの構築に置いた. 角柱の変位は2台のレーザー変位計で測定し,上下の並進振動とねじれ振動を検知できるようにしている.この変位波形を,パソコンを経由して,リアルタイムで噴流を生成する2基のACサーボモータ風洞の制御電圧にフィードバックできるようにした.接近流の風速2.5m/sから3.5m/sで上下振動している長方形角柱に対し,次の2通りのフィードバック方法を検討した. (1)変位の振幅が所定の閾値以上のときに上下のスリットから同じ風速の噴流を連続的に噴出させる方法 (2)測定した1周期の変位波形に比例する風速変化を有する脈動噴流を,後続の変位周期時に噴出させる方法 方法(1)では,振動変位の閾値を小さくすればするほど,噴流は恒常的に噴出するようになる.この方法の実験結果は,閾値を0m/sにして常時噴流を噴出させるようにするほど振動抑制効果が大きいものの,接近流風速が高い3.5m/sの場合には抑制効果がなかった. 方法(2)では,上下のスリットから噴出させる噴流の位相を半周期ずらし,さらに噴流速度が最大になるタイミングの位相を4分の1周期ずつ変化させて実験を行った.その結果,模型変位が上方に最大変位になるときに上縁スリットとから噴出される噴流速度が最大となるタイミングにすると最も抑制効果があった.抑制状態の変位はほとんど無振動の状態になること,および風速3.5m/sの場合でも抑制効果があることが実験より明らかになった.
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