研究概要 |
本研究は,地球温暖化防止のためのCO_2の深部岩盤への貯留技術を実現させることを目的とし,そのサイト選定および貯留性能評価のシミュレーション技術を構築するものである.より具体的には,対象とする岩盤が貯留に適しているものかどうかを評価するための,長期的な帯水層の挙動をシミュレーションする手法を確立させることを目的とする.そのために,流体を粒子の集まりとして取り扱い,隣り合う粒子の衝突を繰り返す流れの自己組織化過程を実現させる手法(格子ボルッマン法)によって,高温・高圧下でのCO_2の溶解した帯水層の挙動の予測を定量的に評価するものである. 本年度は,次の現象のシミュレーションを可能にする格子ボルツマン(LB)法の基本プログラムを構築した. ・CO_2の溶解により密度と粘性が異なる部分が発生した場合の地下水流動過程(液・液2相流) ・2流体間の相互作用をモデル化し,気液2相流の相変化のシミュレーション技術. このために,衝突する粒子の運動量を粒子の分布関数が一定の速度で平衡状態に近づきながら再配分されるという時間緩和法で表現し,さらに対象を正多角形で敷き詰めた格子に分割し,単位質量の粒子を格子線上に移動させていく手法を構築した. さらに本年度は,岩盤の亀裂モデルの不連続面が形成する水みち形状を自己組織化によって表現し,濡れ性を考慮した多相流の流れをシミュレーションする技術を確立させた. 以上の結果,次のような特徴を有するシミュレーション技術の構築が確認された. ・隣り合う格子点の粒子の衝突過程を計算するだけの単純な過程で複雑な現象がシミュレーション可能である. ・系全体の格子点で同時に計算することより,並列処理が可能である. ・静的,動的な境界が自己組織化により形成されるため,複雑な境界条件も簡単に表現することが可能である.
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