研究概要 |
・針葉樹,広葉樹,草地流域を対象にして,流域植生が流出成分におよぼす影響を現地観測によって明らかにした.各流域の上流・中流・下流において梁を設置し,粒径1cm以上の粗粒状有機物(枝,葉)とそれ以下の懸濁態物質,溶存態物質に関して採集・分析を行った.観測は季節毎に行われ,流域別には広葉樹流域からの粗粒状有機物負荷が最も大きいこと,紅葉・落葉期の秋期に最も粗粒状有機物の生産量が多いことなど,基礎資料が収集された. ・これら粗粒状有機物の貯水池内での分解速度を観測し,これに基づいて粗粒状有機物を水質項目の中に組み込んだ水質生態系モデルを構築した.初年度においてはまだ十分なパラメータ調整は行われていないが,粗粒状有機物が貯水池の有機汚濁過程に果たす役割が定性的に明らかになりつつある. ・流域からの物質流出過程をモデル化するために貯留関数法とSWMMによる流出解析を実施した.検証対象は神戸大学キャンパスの上流に位置する都市流域である.各降雨事象における雨量・流量の連続計測と採水を行い,栄養塩,有機物,各種溶存態成分,安定同位体の分析を行った.現在,観測結果の解析と考察を実施中であり,次年度においては時々刻々の流出物質構成の変化や流域特性と流出物質負荷の構成との関係などが明らかになる見通しである. ・流出解析に関しては,流量のみならず種々の懸濁態・溶存態栄養塩や有機物,さらに植物残滓に起因する粗粒状有機物の流出過程についてもモデルの中に組み込み,森林流域と都市流域を対象として,流域特性が相当異なる場合にも適用できるような汎用的流出解析モデルを構築する.
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