研究概要 |
河川河床上に発達する河床の生物群集を対象に環境評価指標を作成することを目的に本研究を行なった.対象とした環境は2つのダムに挟まれた減水区間とその上下流の河川である.本年度得られた成果を以下に要約してまとめる. 1)水質 減水区間においても有機汚濁,富栄養の傾向は見られず,上下流とおして清浄な水質であった.ただし,減水区間では,ダムからの維持放流によって水中のSS,Chl.a濃度が高く,ダムから下流にかけて減少していた.これは本区間では植物プランクトン由来の浮遊物が河床に沈降していることを示している. 2)底生動物 減水区間とその上下流の地点で底生動物相やその多様度指数に特徴を見い出すことはできなかった.なお数年間の調査結果の解析から,全ての地点で60m3/sec以上の出水によって,底生動物が流出していることが示唆された. 3)付着珪藻群集 ダムの上流およびダムからの距離が遠い地点では,平面的な群集構造を示したのに対し,減水区間やダムからの距離が近い地点では,糸状,帯状付着型や移動型が比較的多く出現し,立体的な群集構造が形成されていた.これらの群集構造と水質や物理条件との対応を検討したところ,特に河床材料との関連性が高く,粗粒化した地点ほど群集構造が立体的であった. この糸状,帯状付着型の珪藻は他のものよりも16日程度遅れて発達し,遷移の進行に伴う付着構造の立体化が確認された.また,実験期間中に生じた流量の増加に伴って珪藻の細胞密度は減少したものの,種組成や付着型の変化は見られなかった. 珪藻を用いた水質評価手法では,遷移初期には汚濁性の種が比較的多く出現し,その後徐々に減少して効く傾向が見られた.そのため,DAIpoやSaprobic Indexによって水質を判定した場合,安定した評価値が得られるまで30日程度の期間が必要であることがわかった.
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