研究概要 |
今年度の実施結果は以下の通りである. 1.佐賀県鹿島市七浦地区の現地干潟域にて逆T字形構造物を設置し,堤内部での浮泥の堆積状況の観測を行った.計測開始後,1,2ヶ月経過後2,3cmの浮泥堆積が観測された.その後も観測を継続したが,9月期の台風の影響による構造物の破壊・流失のため,計測を中止した.特殊堤流失前の調査結果および別途実施した浮泥流入の計算結果から,堤内構造としては凹状よりもマウンド状にすることで浮泥の沈積を緩和させうるとの結果を得た. 2.泥干潟面上に流向・流速計,クロロフィル・濁度計を設置し,大潮〜小潮〜大潮の半月周期にわたるモニタリングの結果,干潟底面上付近のSSは、上げ潮開始時と下げ潮の干潟干出前に高濃度を示した。上げ潮開始時のSS濃度のピークは,干潟面を通過する水流による強い攪乱のために生じ,下げ潮のそれは、巻き上げられた粒子が底面に沈積せず、その近傍で高濃度の懸濁液として存在することと水位低下を伴うためと考えられる. 3.上げ潮では、巻き上げ限界流速Vc(ここでは,≒10cm/s)を閾値としてSSの急激な増加現象が見られた。下げ潮では、流速減速時に高いSSが現れる。これは、巻き上げられた底泥粒子の沈降速度が小さく、かつ凝集性や粒度組成などのため、SSと流速にヒステリシス的関係が生じるからである. 4.泥干潟上のChl-a濃度は干潟のない海域での値の数倍程度大きく、干潟干出時における付着珪藻類の干潟面での増殖および泥干潟に生息する底棲生物にとってその餌場としての干潟の役割を示している。また,干潟上に設置したセンサーによるデータのうちSSとChl-aには、強い相関関係が見られた。これは日中干潟が干出している際、干潟表層の付着珪藻類が干潟面で増殖し、干潟が冠水し始める上げ潮初期に、底泥の巻き上げとともに水中に供給されたものと考えられる。
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