研究概要 |
建築を学ぶ学生にとって最も困難な必修科目は構造力学である。これは,目に見えない「曲げモーメント」などの概念を数学的に理解しなければならないからである。そこで,構造物に生じる力と変形をパソコン上で可視化し,学習者がリアルタイムで自由に仮想実験を行いながら力学を理解できるようなソフトウェアがあれば有益となる。本研究では,平面トラス,片持ち梁,単純梁,モール円を対象にした教育ソフトをJava言語で作成してきた。このソフトは次のような特徴を持つ。 1.荷重の位置,大きさ,数をマウスだけで自由に変更できる。 2.任意の微小領域の変形状態・応力・ひずみ分布を拡大表示できる。 3.荷重を変更すると,変形状態,曲げモーメントなどすべての情報が画面上で連続的に変化する。 平成15年度の前半は,これまで試作した梁や平面トラスのソフトを改良した。特に,平面トラスのソフトについて,不安定な場合についての警告を出すなど,大幅な改良を行った。平成15年度の中盤から後半では,簡単な静定ラーメン構造の釣合いと変形を学習するソフトを作成した。たとえば,折れ曲がった片持ち梁,柱をのせた単純梁,門型フレーム,多層建物などである。特に,多層建物のソフトでは,力の釣合いだけでなく,剛性行列の意味も学習できるように工夫をほどこした。これらのソフトは,ホームページ http://kitten.ace.nitech.ac.jp/soft_j.html から誰でも無料かつオンラインで使用できる。さらに,来年度早々には,技報堂出版よりこのソフトに基づく構造力学の教科書を出版する予定である。
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