研究概要 |
本研究は、衰退しつつある地方都市の既成住宅街区の再生に向けて、検討すべき課題と可能性をあきらかにしようとするものである。 平成15年度の研究実績は、第一に、札幌市の既成住宅街区における空地インフィル・小規模低層中密・住民ネットワーク型集合住宅2事例の調査をおこない、その空間、主体、手法の各特性と問題点をあきらかにした。その結果(1)空間は3階建て、延床面積700m^2前後、法定容積率の8割使用、(2)主体はユーザーと不動産、まちづくり、建築設計の専門家グループとの協働、5〜7の小規模な世帯数、(3)手法は分譲住宅コーポラティブ、ワークショップの方式、に特徴がみられた。とくにコーポラティブ方式におけるユーザー集めと土地確保の難しさが問題点としてあげられる。 第二に、国内の類似事例として、京都の町家型集合住宅6事例をとりあげて調査をおこない、前述の札幌の事例との比較分析をおこなった。その結果、(1)空間は3〜5階建て、延床面積1,000〜2,000m^2、法定容積率の6〜7割使用、(2)主体は地主・大家、店子のユーザーとまちづくり、建築設計の専門家グループおよび京都市住宅供給公社との協働、12〜24の世帯数、(3)手法は特定優良賃貸住宅、借上げ市営住宅、京都市袋地再生事業の諸制度の連携、に特徴がみられた。中層の建物、法定容積率を目一杯使い切っていないこと、多様な主体の協働は札幌と共通するが、面積・世帯規模の比較的大きいこと、主体への公的機関の参与、多様な公的制度の活用は札幌にはみられない点である。 以上を総括し、札幌独自の可能性および問題点・課題として、(1)コーポラティブ方式の課題への取組みと展開の検討、(2)コーポラティブ方式以外の多様な手法の開発の検討-具体的には、土地の所有関係を変えず(土地費の負担を生じさせず)に法定容積率の低減(6〜8割使用)で事業採算の見合う集合住宅供給手法の検討、(3)公的機関、公的財源の参与の可能性の検討、の3点があげられる。
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