ポンペイ現地調査計画の作成にあたり、4月より、調査区画、規模、方法などを検討し、8月までに、ヴェスヴィオ門付近の城壁、およびヴェッティ通りに付近の住宅を調査地区に選定した。選定理由は、従来古い(前3世紀)とされている切り石積みによる壁体と城壁との関連を明らかにするために、ポンペイの中でも比較的多様な壁体構法を示すヴェスヴィオ門付近、そして、そこからもっとも近傍の切り石積みファサードを示す住宅である。9月よりポンペイ考古局に対する申請書を作成し、11月までに調査許可を得た。12月より1月にかけ、当該地区を調査し、城壁を構成する石材と切り石積みによる住宅正面を構成する石材の基礎的なデータを得た。調査方法としては、トータルステーションを用いた3次元測量に、正投影画像を生成するソフトウェアを組み合わせ、壁体を構成する各石材の寸法を数値データだけではなく、デジタル画像データとしても記録した。これにより、海外調査という時間的、地理的に制約の多い条件の中で、少人数(2名)、短期間(4週間)、かつ汎用性の高い調査データが収集された。現在、城壁に用いられていた石材が住宅に転用された可能性について、主に石材のモジュール、建設技法の観点から分析を進めている。とくに、ヴェスヴィオ門東側の内側城壁については、住宅ファサードに近いモジュールを示している可能性があり、現在注目しており、逆に住宅用の石材が城壁に転用された可能性を含めて分析を進めている。
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