溶融石英基板に幅あるいは直径10〜50ミクロンの矩形の溝あるいは円形の孔を穿った、上面開放型マイクロチップを微細加工した。この微細加工基板に必要に応じてシランカップリング反応を用いて疎水処理(オクタデシルシリル基による表面修飾)を施した。メチルトリメトキシシランあるいはテトラメトキシシランを出発物質とする相分離を伴うゾル-ゲル反応系を用いてマクロ多孔構造を作製し、走査型電子顕微鏡によって乾燥試料を観察すると共に、ゲル骨格内あるいはマクロ孔内にフルオレセイン溶液を導入した後、レーザー励起による蛍光を共焦点顕微鏡で観察することにより、多孔構造の3次元観察と界面付近の構造の観察を試みた。 上面を開放した微小溝内では、相分離によって生じたゲル骨格がバルク相内の重合体成分を取り込んで構造形成が進むため、マクロ多孔構造は密閉条件での構造に比べて緻密になった。また、比較実験として行ったキャピラリーを含むすべてのマクロ多孔性ゲルにおいて、界面近傍数ミクロンの範囲で、壁面の濡れに起因するゲル成分の欠乏層が生成し、これに伴って壁面近傍の気孔率が高くなること、界面欠乏層の厚さは微小空間のサイズにはほとんど依存しないため、ディメンションの小さい微小空間ほど、界面欠乏層の割合が高くなることが明らかになった。ゲル網目の自発的収縮傾向の弱いメチルトリメトキシシランとジメチルジメトキシシランの混合系や、架橋密度が高くゲル網目の流動性に乏しいテトラメトキシシラン系ではこのような局所的な構造変化は観察されなかった。したがって微小空間内での共連続マクロ多孔構造形成が、壁面への濡れおよび化学結合の形成と、ゲル網目の流動性とに複雑に依存することが明らかになった。
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