研究概要 |
本研究では、n型酸化物半導体として酸化亜鉛を、p型酸化物半導体として酸化ニッケルを選択して、これらのウィスカーを長軸方向でヘテロ接合することでマイクロサイズpn素子を創製することを目的としている。平成14年度は、これまでウィスカーとして得られていない酸化ニッケルを、大気開放型CVD法を用いてエピタキシャルウィスカーとして成長させる条件を探索し、得られた構造体についてその形態をFE-SEMで詳細に調査し、結晶構造をX線回折法を用いて調査した。 Ni(C_5H_7O_2)_2を原料錯体に用い、基板に(0001)サファイヤ単結晶を用いた。原料気化温度を180℃から220℃で変化させ、基板温度を450℃から640℃で変化させて酸化ニッケルを成長させた。気化温度は200℃が安定気化温度であると判定した。気化温度を200℃に設定して、基板温度を変化させて作製したNiO結晶の形態をFE-SEMで詳細に調査した結果、基板温度550℃以上でNiOはウィスカー密集体として成長することがわかった。基板温度の上昇に伴いウィスカーの成長速度は増大し、基板温度640℃では約63nm/sに達した。ウィスカーの直径は約5μm(基板温度500℃)から9μm(640℃)へと増加した。ウィスカーの数密度は、基板温度の上昇に伴い7×10^4mm^<-2>(500℃)から0.5×10^4mm^<-2>(640℃)へと減少した。X線回折の結果、NiOウィスカーは[111]方向に優先配向していることがわかった。極点図形測定の結果、NiOウィスカーはサファイヤ基板と同じ面内回転角で6回対称の回折線が得られた。このことから、ウィスカーは面内にも高配向していること、また、サファイヤ基板に対してエピタキシャル成長していることが明らかとなった。エピタキシャル関係はNiO[111]//Al_2O_3[0001],NiO[112]//Al_2O_3[1010]と確認された。以上の結果、NiOを大気開放型CVD法によりエピタキシャルウィスカーとして作製できることを見出した。
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