研究概要 |
ジルコニアに1〜3molイットリアを含むセラミックスの正方相-単斜相変態(マルテンサイト型変態といわれている)について,等温処理と非等温処理を施し,変態開始温度や,変態量,変態の進展の過程を調べた。 400-800Kの等温時効の時間と共に,単斜相量はシグモイダル的に増加した。その増加の仕方は,核生成-成長のそれに類似していた。変態量-時効時間曲線から得たTTT図は,C字型になり,イットリア量の減少と共に短時間側へ移行し,飽和変態量が増加することを明らかにした。しかし,いずれの塑性,温度とも,変態速度は同じで,速度論的解析から粒界面核生成の不均一核生成で進行することが推測された。さらに,その変態は,水環境で加速するが,それは核生成速度が増加するためであること,さらに中性子線や放射光を用いた回折実験から,試料の表面から試料内部へ進展することなどを明らかにした。また詳細な変態に伴う表面起伏の原子間力観察から,変態は正方相の粒界から粒内へ向かって進行すること,アルミナ添加で,その変態の進展がアルミナ粒子や立方晶相に阻止され留ことなどを明らかにした。従って,以上の実験結果から,本変態がある種の拡散支配の相変態であることが明らかになった。従来,本変態が非等温的変態とされていたが,非等温処理で得られたMs点と鼻より高温でのC曲線とほぼ一致したことより,イットリア量が少ない場合は,特に,等温変態速度が速いため,非等温変態と受け取られていた可能性が強いことを明らかした。 本研究結果は,バイオセラミックスとして利用する際は,変態の進展速度を十分認識して検討する必要があることを示唆している。
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