研究概要 |
ジルコニアに0〜4mol%のイットリア,0〜30mass%のアルミナを含むセラミックスの正方晶-単斜晶相変態(マルテンサイト型変態といわれている)について,変態開始温度,変態に伴う熱量変化,長さ変化,変態集合組織に及ぼすアルミナ添加の影響を調べた。 (1)アルミナ添加のないセラミックスの変態温度は,イットリア添加量の増加と共に減少し,2.5%以上では,ほぼ一定値であった。アルミナの添加は変態温度に大きくは影響しなかった。 (2)アルミナ添加と共に,結晶粒径は増加したが変態温度や変態に伴う熱量測定は変わらなかった。しかし,熱膨張変化はアルミナ添加の方が大きいことが判明した。 (3)T-M変態に伴う表面起伏は,T相の粒界から発生し,粒内へ進展,さらに隣接粒へ伝播した。その伝播はほぼ同心円状に広がったが,アルミナ添加でT相中に存在する孤立アルミナ粒子でT-M進展は途絶え,その結果,多方面に伝播し,アルミナ無添加の場合より枝分かれするT-M進展状態であった。 (4)変態に伴って,(111)_Mと(11-1)_Mの集合組織が顕著に表れたが,アルミナ添加によってそれらは軽減された。また,それらのX線回折強度比も,アルミナ添加で粉末試料とほぼ同じ強度比になった。すなわち,変態による結晶学的集合配向はアルミナ添加で軽減されることが明らかになった。これは,T相粒内での変態生成物への拘束力が小さいことを意味する。 (5)変態に伴うセラミックスの割れ発生は,アルミナ添加で抑制されることが判明した。すなわち,アルミナ添加で機械的性質の向上が図られた。 (6)アルミナ添加による機械的性質の向上は,T-M変態に伴って生成するM相の隣接T相からの拘束力の減少に関係することが期待され,アルミナ添加がバイオセラミックスの生成に有効であることが判明した。
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