研究概要 |
本年度(14年度)は、これまでに見出しているナノ結晶高強度Mg_<97>Zn_1Y_2(at%)合金の成分の特徴、すなわち、3元素以上の多元系、3つの元素の原子寸法比が12%以上異なっていること、互いに負の混合熱を有していること、さらに構成元素が全て六方晶であることの4項目に基づいて、同様な合金成分の特徴を持つMg-rich合金を選び、新規構造相である長周期六方晶が生成する合金系と組成を探査する。研究する合金系は、Mg-Zn-RE (RE : La,Ce,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Yb,Lu)系およびMg-Sc-RE系などの3元合金である。また、ナノ結晶Mg_<97>Zn_1Y_2(at%)合金が高強度特性を示す因子、優れた延性および高速超塑性の発現の解明を高分解能透過電子顕微鏡観察により行う。 高強度特性が得られる因子は、(1)母相粒子の微細化強化、(2)ZnとYによる固溶体強化、(3)高密度面欠陥の存在と長周期六方晶Mg相の形成、および(4)Mg_<24>Y_5化合物粒子の分散強化の相乗効果によることを明らかにした。優れた延性および高速超塑性の発現の原因は、(1)結晶粒界に析出物がなく、微細なMg_<24>Y_5化合物がMg母相内に均一に分散していること、および(2)微細なMg_<24>Y_5化合物の均一分散および新規な長周期六方晶原子配列に起因して変形中の粒成長が困難になったためと考えている。長周期六方構造が生じる希土類元素はSm、Gd、Hoであり、LaおよびCeは化合物相が生じ長周期六方構造を生じなかった。LaおよびCeは、Mgとの原子寸法比が、それぞれ17%および15%と非常に大きく、Mg中の固溶限が小さいため容易に化合物相が生じてしまう。そのため、化合物相の析出にともない、過飽和にZnおよびREを含むMg相の格子ひずみを緩和してしまい、長周期六方構造が生じないと考えている。Mgの原子寸法を考慮し、長周期六方構造の出現をコントロールすることは、高強度マグネシウム合金の開発に重要であると考えている。これらの知見に基づいて、次年度でも新規長周期六方晶構造をもつ超高比強度Mg基ナノ結晶合金の開発研究を行う予定である。
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