研究概要 |
シリコン基板上にダイヤモンド状炭素(DLC)膜を合成した後,表面・裏面電極を付けて太陽光発電素子を作製した.この素子にXeアークランプにより光を照射し,電気的特性の評価を行った.素子は入射光側からAu/a-C : H/n-Si(p-Si)/In-Gaという構造になっている.これらの膜についての測定及び素子の出力測定により以下に示す結果が得られた. 1.DLC膜合成時の基板バイアス電圧,原料ガスを変えることで膜の光学バンドギャップ値を2.2eV〜2.8eVまで変化させられることが分かった.この変化はアモルファス炭素膜のsp^2/sp^3性に関係があり,光学バンドギャップ値が比較的低い膜についてはsp^2成分の多い膜であることがラマンスペクトルなどから確認された. 2.作製した太陽光発電素子の出力測定を行ったところ,RFプラズマCVDにより合成したDLC膜の方がマグネトロンスパッタリング法により合成されたa-C膜より高い出力を示した.これよりダングリングボンドを水素により終端することで膜の欠陥密度を大幅に低減できたと考えられる.また窒素ガスを導入することで開放端電圧が,TMBガスにより短絡電流密度がそれぞれ上昇した. 3.素子にXeアークランプ(強度;100mW/cm^2)を照射して出力特性を測定したところ,開放端電圧Voc=1.2mV,短絡電流密度Isc=0.47nm/cm^2が得られた.これにより炭素系材料のみによる太陽光発電素子の発電が確認された. 4.ワイヤー状素子の作製を行った.素子の構造はAu/a-C : H film/i a-Si:H/n a-Si : H/Tugsten(W)wireであり,この素子の光発電試験を行い発電を確認した.開放端電圧Voc=45mVであった.また蛍光灯のような微弱な室内灯によっても発電が確認され,その値は0.5〜1.5mVであった.
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