研究概要 |
高圧合成単結晶(100)ダイヤモンド及びシリコン基板上に窒素及びボロンをドーピングしながらダイヤモンド状炭素(DLC)膜を合成した後,電極を付けて太陽光発電素子を作製し,この素子にXeアークランプ光を照射し,発電特性の評価を行った.合成は,13.56MHzのRFプラズマCVD法により行った.素子は入射光側からAu/a-C:H/n-Si(p-Si)またはBドープダイヤモンド/In-Gaという構造である.これらの膜についての測定及び素子の出力測定により以下に示す結果が得られた. 1.作製した太陽光発電素子の出力測定を行ったところ,窒素ガスを導入することで開放端電圧が0.12Vから0.30Vに上昇し,短絡電流密度も1.2倍に向上することがわかった,また,トリメチルボロンによりボロンをドーピングすることにより,開放端電圧はほとんど変化しないが,短絡電流密度が2.2倍に上昇することがわかった.従って,キャリア密度はドーピングにより上昇しているものと思われる.ただし,膜自身の欠陥密度が大きいことが問題である. 2.アニーリングの効果について検討した.その結果,大気中で300℃のアニーリングを行うことによって,開放端電圧が約3倍に上昇し,短絡電流密度も6倍向上することがわかった.これは膜の欠陥が再結合により減少することによると思われる.ただし,温度を450℃と高くすると発電効率は低下する. 3.ダイヤモンド基板を用いて同様に作成したDLC素子にXeアークランプ(強度;100mW/cm^2)を照射して出力特性を測定したところ,開放端電圧Voc=1.3mV,短絡電流密度Isc=0.66nA/cm^2が得られた.これにより炭素系材料のみによる太陽光発電素子の発電が確認された. 以上の結果から,ダイヤモンド状炭素膜が将来の太陽光発電素子として十分なポテンシャルを有していること,欠陥の低減が今後の課題であることを明らかにした.
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