研究概要 |
従来不可能だったサブミクロン以下のナノ粒子の一個粒子間相互作用の直接測定を可能とするため、原子間力顕微鏡(AFM)探針に接着したカーボンナノチューブ(CNT)の先端にナノ粒子一個を接着したナノコロイドプローブ作製法の確立を試みた。AFMの探針に分離精製した直線状のCNT、さらにナノ粒子を接着するために、昨年度、設計・試作した高分解能FE-SEMシステムに設置可能な六軸の駆動用ピエゾ素子を用いた超小型ナノマニュピレーターシステムを現有の計算機制御FE-SEMシステム内に設置した。このマニュピレーターは、原子間力顕微鏡用探針を取り付ける側の腕がx, y, zの三軸方向、さらに回転方向4軸、ナノ粒子やカーボンナノチューブを取り付ける腕は、二軸の同様の微動用ピエゾが取り付けられており、いずれのピエゾ素子も0.1nmのオーダーで微駆動可能なものに設計した。このマニュピレーターの駆動精度をFE-SEMにより観察した結果、設計したナノスケールでの微動が可能であることを確認した。 次に、AFM探針に接着用の直線状のCNTの分離精製法とナノ粒子一個まで分散するための分散法を検討した。CNT合成時には、本研究で使用可能な直線状のCNTは実際にはごく僅かしか生成せず、直線状のCNTの分離と単離したCNTをエッジ上に一端を付着させ直立させるため、溶媒中に分散させたCNTに高周波電源を用いてエッジ上に直線状CNTの櫛状の付着を試みた。また、ナノ粒子についても、溶媒中での一次粒子までの分散が必要であり、粒子径数nmのγ-アルミナを用いて分散可能な分散剤構造を探索し、分子量の低い分散剤が有効であることを確認した。この分散性ナノ粒子を噴霧乾燥顆粒を得て、粒子の表面状態が変化しない程度に加熱処理し、AFM探針に接着したナノ粒子からなるコロイドプローブを用い、ポリエチレンイミン(PEI)のエタノール中でのアルミナナノ粒子間相互作用に及ぼす分子量・分子構造の影響を検討した。その結果、サブミクロン粒子では最も高い分散性と立体障害斥力を発生させる分子量10000の分岐型PEIが、ナノ粒子になると粒子間に架橋を形成し、数十nmの遠距離引力が生じるナノ粒子固有の挙動の存在を確認した。
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