研究概要 |
本研究では,シリカあるいはチタニアなどのセラミックスを膜材料として用い,選択的溶解機構に基づく新規な水素分離膜を提案している。アモルファス状態のシリカやチタニアなど酸化物はその分子構造がネットワーク構造を有し,ヘリウムや水素分子のみが透過可能,あるいは,ヘリウムや水素分子すら透過困難な微小な細孔を形成する。このネットワークには,SiOH基あるいはTiOH基が存在し,これらのOH基のHは水素イオンとして拡散移動することが可能であり,高いプロトン伝導性を示すことが示されている。本研究では,まず,シリカあるいはチタニアを用い,プロトン伝導性薄膜の創製を行うことを研究目的とする。さらに,プロトン伝導性を有するセラミックスと白金などの電子伝導性材料をナノサイズで並列複合化することで,溶解拡散を分離原理とする新規な水素分離膜の創製が可能になると考えられる。 今年度は,プロトン伝導性薄膜の創製に関する研究を行った。まず,チタンテトライソプロポキシド(TTIP)を出発原料とし,加水分解によりポリマーゾルを調製した。その後,85%リン酸を添加することでポリマーゾル(モル比H_3PO_4/TTIP=9/1)を得た。縮重合させることでチタニアコロイドゾルを調製した。パイレックス製スライドガラスに,ディップコーティング法により電気伝導率測定サンプルを作製し,AuまたはPt電極を蒸着し,AgペーストでCu線を結線した。実効抵抗は,基準条件を50℃,80RH%とし,交流二端子法を用い,Cole-Coleプロットより位相角θ=0を近似することで求めた。表面抵抗率,電気伝導率は電極形状と膜厚で換算し求めた。 チタニアコロイド粒子(TiO_2)で形成したナノ細孔内にチタンリン複合酸化物(Tip)ポリマーを充填したチタンリン複合膜(Ti/TiP)の伝導率は,0.05〜0.083S/cmと高い値を示し,標準測定条件で伝導率が0.094S/cmのTi/TiP膜は,200℃(水蒸気圧50kPa)においても0.075S/cmと高プロトン伝導性を示した。
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