研究概要 |
化石エネルギー資源の枯渇等環境問題の観点から、クリーンで安全なエネルギー獲得技術の確立が急務となっている。その中で、膨大なエネルギー源である太陽光エネルギーの有効利用技術は最も期待されており、そのキーテクノロジーとしての光触媒に注目が集まっている。一方、最近では計算化学が種々の触媒材料に適用され、触媒反応機構や被毒機構の解明に大きな成果を挙げている。しかし従来の計算化学は、実験的に理解されている現象の理論的解釈をその主目的としており、新規な触媒の開発に役立った例は殆どない。研究代表者らは計算化学にコンビナトリアルケミストリーの概念を導入した「コンビナトリアル計算化学」という新しい概念を提案し、実質的に役立つ計算化学による触媒設計を実現してきた。そのさらなる推進のため、従来の第一原理量子分子動力学法に比較し5000倍高速な新規高速化量子分子動力学法プログラムColorsの開発に成功している。研究代表者らは既に、上記Colorsプログラムを用いて、大規模系での静的励起状態の計算に成功している。本研究では、上記Colorsプログラムを有限温度下での励起状態ダイナミクス計算が可能となるよう拡張し、世界に先駆けて光触媒反応の大規模シミュレーションが可能な高速化量子分子動力学プログラムの開発に成功した。より具体的には、まず開殻系の取り扱いを可能とするため、α,β電子でハミルトニアンの対角要素がHartree-Fock-Roothaan方程式でのα,β電子に対するFock演算子の対角要素の差となるように拡張することで(非対角要素についても同様に拡張)、自己無撞着的な電子状態決定を行うことに成功した。次に、励起状態については、励起させる電子の軌道と励起後の軌道をあらかじめ指定し、その電子配置についての電子状態計算を行うことでその取り扱いを可能とすることに成功した。
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