本研究はカチオン交換性層状金属酸化物から得られる厚さ数nm未満のポリアニオンナノシートを高性能な光触媒、固体酸触媒、あるいは新材料として展開することを念頭に置き、光触媒反応、酸触媒反応に最適な2次元マクロポリアニオンシートの探索を行うと同時に、ポリアニオンシートの構造を解明することを目的としている。 十数種類のカチオン交換性層状金属酸化物の単結晶ポリアニオンナノシートを液相で剥離し、これを凝集させることによって得た高表面積の粉末材料を触媒としてさまざまな酸触媒反応が研究された。HTiNbO_5、HTi_2NbO_7、及びH_<1.15>Ti_<1.15>Nb_<0.85>O_5ナノシート凝集体はエステル化等の液相酸触媒反応において非常に強い固体酸触媒として働くことが明らかになった.特にHTi_2NbO_7、及びH_<1.15>Ti_<1.15>Nb_<0.85>O_5ナノシート凝集体は固体強酸として工業的に使われている含水ニオブ酸(Nb_2O_5〓nH_2O)を上回る酸触媒活性を示した。 従来の手法、及び分光学的手法によってこれらのシート凝集体の酸性度は90%以上の濃硫酸に匹敵すること、更にTi^<4+>とNb^<5+>の双方に共有される酸素イオンと対になっているプロトン(Ti-(OH)-Nb)が強い酸として働くことが明らかになった。この表面種が強い酸点として働くことはこれまで知られておらず、全く新しいタイプの酸点といえる。この酸点は単純なTiとNbの混合酸化物では発現せず、単結晶のナノシートのみに形成されることが確認された。 また、Nb-Mo、Nb-W等の遷移金属からなるポリアニオンナノシートも固体酸触媒として機能し、出発物質の層状金属酸化物を選択することによって様々な酸強度をもつポリアニオンナノシート触媒が得られることが明らかになった。 以上の結果からポリアニオンナノシートは固体酸触媒として応用展開できると考えられる。
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