研究概要 |
燃料電池に使用される固体高分子電解質(例えばNafion^<【○!R】>)の構造はランダムな親水ドメインを有する海島構造であるため,プロトン伝導率は10^<-1>〜10^<-2>Scm^<-1>止まりでありこれが実用化の障壁になっている。研究代表者らは,予備実験からポリマーブレンド法を用いた固体高分子電解質において,親水チャンネル構造を制御する方法を見いだした。本研究の第一の目的は、電界配向という新規膜構造制御技術に基づき作製されるイオン伝導性ポリマーコンポジットの学術的基礎を確立することにある。また第二の目的は,電界配向により形成される直貫細孔部(ストレートポア)の極微領域伝導率計測法を確立することにある。今年度の主要な研究実績は,以下の通りである。まずポリマーブレンドプロトン伝導体の組成の研究を行った。その結果,プロトン酸基を有する高分子と,基体となるフッ素系ポリマーの他にコンパチビライザーとなる第三成分の添加が,高イオン伝導の発現に不可欠であることが分かった。また,高イオン伝導を示すポリマーは,明瞭な相分離構造を示すことも分かった。次に,ポリアクリル酸を含むポリマーブレンドをキャスト製膜する際に電界配向を行った。その結果,2-4kV/cmの直流電界印加のもとで乾燥製膜した膜の伝導度が電界を印可しないものに比べて数倍の値を示すことを明らかにした。この傾向は,三元系の全組成に共通するが,絶対値は組成に依存することも明らかになった。一方,微小レベルの伝導度測定を行うために,電気化学AFMを立ち上げ,その基本動作特性の確認を終えた。以上のように,初年度の研究は,おおむね計画に沿って遂行された。
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