直接メタノール型燃料電池は、マイクロエレクトロニクス用の移動電源としてその実用化が待望されている。実用化のためには、高価で資源の少ない白金に代わる代替触媒の開発が必要である。しかし、安価で資源的に有利な酸化物系電極触媒の研究は少ない。触媒の設計指針が確立されていない現状では、探索のアプローチとしては、ある程度「絨毯爆撃」的にならざるを得ない。そのための手法として「コンビナトリアル」手法がある。これは、可能性の高い領域を組織的にスクリーニングする手法であり、これまでに医薬品の開発に大きな成果を上げている。しかし、直接メタノール型燃料電池における酸化物系電極触媒をターゲットとした研究は行われていない。 本研究では、エレクトロスプレー法を用いる薄膜作製法を上記の「コンビナトリアル」手法に応用することを目的とした。原料として、硝酸マンガン、硝酸コバルトを用い、エタノールと2-(2-ぶとキシエトキシ)エタノールの混合溶液中に溶解させたものを用いた。印加電圧を5.8Vとし、エレクトロスプレー法を用いて薄膜作製を行ったところ、均一なモルフォロジーの薄膜が作製出来た。さらに、基板をXY方向に制御して製膜を行い、マンガンとコバルトの組成が傾斜になっている膜の作製に成功し、コンビナトリアル手法に適用出来ることを確認した。この膜に白金を少量担持したところ、良好な酸素還元特性を有することを確認した。
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