本研究では、分子ナノワイヤーの設計と構築を目指して、以下のような研究を行った。 (1)ナノスターデンドリマーの電子状態を計算し、その軌道の特異は局在性を見いだした。つまりHOMOとLUMOは中心にあるペリレンに局在し、その他のフロンティア軌道は周辺に局在している。これによりナノスターデンドリマーの集光機能が理解できた。 (2)銅(111)表面とC60分子からなる自己集積単分子膜に関して、C60分子の望ましい配向について軌道相互作用の観点から考察した。その結果、C60分子のedge-atomあるいは6-6bond配向が最も望ましいことが分かった。 (3)単一分子からなる分子ワイヤーのコンダクタンスをLandauerの理論を用いて調べ、コンダクタンスと分子軌道の間に興味深い関係を見いだすことに成功した。ここではナノグラファイトシートやDNA分子のコンダクタンスを計算した。フェルミ準位での透過確率の大きさを比べるとグラファイトシートへの接続の仕方によりそのコンダクタンスが大きく変動することが分かった。 これらの結果をまとめた論文については既に発表済みである。
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