研究概要 |
Ti(OR)nと他の金属アルコキシドMe(OR)n(Me=Zn, Sn, Zr, Hf, n=2,4)を各種組成比で混合させ、アセチルアセトン(ACA)を(Me1+Me2)/ACA=1となるように調製した。その後この溶液を、ラウリルアミン塩酸塩(LAHC)水溶液にモル比で(Me1+Me2)/LAHC=4となるように混合した。353Kでゾルゲル反応させ複合セラミックス材料を合成し、353Kで乾燥後、773Kで4時間焼成することにより目的の試料を得た。 焼成後の複合セラミックス材料は、電子顕微鏡(TE M)、電子線回折、X線回折(XRD,CuKa)、77Kにおける窒素吸着等温線測定によりキャラクタリゼーションを行った。結果は、各種金属で異なるが、以下に、Snとの複合体形成について述べる。焼成したTiO_2-SnO_2試料のXRDパターンの解析結果は、これらの試料が単に2種類のセラミックスがマクロに混合したものでないことを示した。TiO_2、SnO_2単独で合成された試料は、それぞれanatase結晶構造と、tetragonal結晶構造に起因するピークが確認された。しかし50:50の混合試料では、anatase構造を示すピークは現れず、SnO_2単独で確認されたtetragonal構造を示すピークのみが現れていることが分かつた。これはこれらの混合試料が、SnO_2のtetragonal結晶構造をベースにして、原子レベルでTiが組み込まれている混晶半導体の形成を示唆している。Ti:Sn=95:5の試料では、逆にanatase結晶構造にSn原子が組み込まれていることを示している。また、それぞれの結晶構造から異なる結晶構造へと変化する際には、Ti:Sn=80:20試料に見られるようにどちらの結晶構造も示さないアモルファス状の構造を示した。Ti:Sn=90:10混合試料では、どちらの結晶構造にも起因しないピークが確認でき、新しい結晶構造の形成が示唆され複合晶の存在が確認された。モルフォロジー、結晶構造など今後解明を進める計画である。 各複合試料の組成比と光触媒活性の相関性の解析より、光触媒活性は、Sn5%を加えた複合試料においてもっとも高い値を示した。今回の測定には365nm UV-lumpを用いており、酸化スズのバンドギャップはこの365nmの光エネルギーよりも大きいため、光触媒能は存在しない。しかし、Ti=25,50%試料では酸化スズのtetragonal構造を保持しながら、光触媒活性の増加が確認できる。これはXRDの解析からも示唆されているように、Ti原子が組み込まれることにより、tetragonal構造SnO_2のパンドギャップが変化するためであると推論される。Ti=95%試料では最大の光触媒活性を示し、単に比表面積に依存した値でないことを確認している。
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