高分子系では、環状ポリペプチド等のチューブ状構造体が知られているが、内径が1 10ナノメートルの範囲にある独立のナノチューブは例がない。 フラン樹脂の重合反応に対する界面活性剤の鋳型効果に着目し、界面活性剤存在下でのフェノール/フラン系共重合反応について検討した。その結果、フラン系モノマーとしてアルデヒド形のフルフラール、界面活性剤としてカチオン性のアルキルアンモニウムブロミドを用いて、重合反応をアルカリ触媒下で温和に進行させることにより、フェノール/フルフラール高分子を骨格とする外径約6nm、内径約3nmのナノチューブならびにハニカム構造体を合成することに成功した。攪拌操作を加えずに反応を行った場合は、一端が閉じたナノホーン形ナノチューブが生成することも見いだした。さらに、シリカ系等と同様に、界面活性剤の鎖長を変えて反応を行うと、鎖長の増大とともに、チューブ内径も拡大することも分かった。フルフラールの代わりにホルムアルデヒドを用いた系でもハニカム構造体が得られ、一部ナノチューブの生成も認められた。フェノール環への官能基の導入についても予備的な検討を行っている。 フェノール系に加えて、グルコサミン系でもナノ構造体が得られることを見いだしたが、その組成構造等の詳細は目下分析中である。
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